デビ
デビ
あのぉ……そのぉ、これは」
エプロンをかけた自称天使は人差し指を突き合わせ、言い訳を始めている。幸一はその奇怪な物体に入った白く細かく、柔らかい何かの破片を箸で取り分けていた。取っても取ってもキリが無い。
「いやぁ……力の加減が難しくて……つい」
奇怪な物体の周りは黒い液体でビチャビチャ。醤油だ。フライパンに油を引くところを、醤油を引いてしまったのだ。
「……これって結構、間違わない?」
そして……ふるのは塩であって、砂糖じゃない。最初はともかく、ラベルを貼ったからもう間違えようがないはずなのだが……
……女はしきりに頭を掻いて、顔を真っ赤にしていた。
『住ませて貰うんだから、何かお礼に家事でもするわよ』
……女が元気そうに宣言したのが、約一週間前。いらない、という幸一を無視し、最初にした家事は……確か洗濯だったか? 漂白剤を入れてしまって、洗濯物全てを真っ白にしてしまったんだな、あの時は。しかも干す時に洗濯物のシワを伸ばすのだが……加減がわからず、ビリビリと破いてしまった。
次は……皿洗い。洗剤の代わりに、油を使って全部ギトギトにしてしまい……その後、油を固める溶液で……もちろん、皿は全部破棄した。
掃除機……を使わずに、『こんなのは風を使えばあっと言う間に』とか言って……木目の床は御覧の通りズタズタだ。
おかげで、幸一はかなり疲弊している。ここの所は学校が終わってもすぐには帰らず、精神統一をしてから帰る有り様だ。
もちろん、幸一が疲弊するのは大歓迎だ。オレが乗っ取るチャンスが増えるのだから。
しかし……オレまで疲れているような……気のせいだろうか?