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クマと会って、もうどうしようもなかった私なんですけど……こちらに向かって、誰かが登ってくる音が聞こえたんです。薄情なようですけど……『逃げろ』なんて言えませんでした……むしろ、気が向こうに逸れてくれって……
斜面を登り切って、その人が見えたんです。いえ、私の知らない人でした……少なくともその時は……いえ、複数ではなくて、一人です。男子で、背が高くて……あとは、あまり覚えてないんです……後のことが、インパクト強くて……
その男子は、岩場に腰掛けていた私に気付いて……足を挫いたことに気付いたんでしょう、手の仕草で『隠れろ』って……
クマは、そっちの男の子の方に気付いて、突進したんです。
ああもうダメだ、と思って私は眼を閉じてしまって……でも、クマが威嚇する唸り声を後から聞いて、おそるおそる眼を開けてみると、どうにかその突進をかわしたのか、その男子に傷はありませんでした。互いの位置が入れ替わっていて、彼が私を守るように、私の前にいました。
そこで彼はもう一度私の方を振り向いて『隠れていろ』って……
とりあえず、片足で私はそこから逃げようとしたんですけど、『グオォォォ』とクマの叫びが聞こえて……