ショウタイム

明日

明日

「見られたか」

……背中に氷を入れられたかのように冷たく感じる……のは錯覚だ。これは僕―田村俊也―が幼い頃に体験したことの『夢』だ。あまりにもインパクトが強く、十年経った今でもよく見る。ただし、音声だけで。映像というものが無いのだ、この『夢』には。

「見られたからには生かしておけない……が、殺すと後始末が面倒だな」

映画みたいな台詞回し。抑揚がこの声には含まれていない。声音は毎回変わる。男だったり、女だったり、知り合いのものだったり、赤の他人のものだったり。

「全部は無理だろうが……記憶を消すか」

 そこで夢はいつも終わる。今回もその例外ではなかった。悪夢なのに僕は悲鳴をあげる事も無く、むっくりと体をベッドから起こし、汗に塗れた額を手の甲で拭う。

 ……あの夢が、本当に僕が経験したものなのかどうかは、正直疑わしい。何しろ小学一年生、六歳の頃の記憶だ。そして何より、僕が両親や友人に言いふらした内容を考えると、これまた『現実』とは思えない。

僕が周りに何て言ったかって? ……その人が男なのか女なのかもわからないけど、インパクトが強すぎたからか、その正体だけはしっかり覚えていた。だから僕はありのまま、覚えているまま、こう言った。

「きゅうけつきが、人をころしてた!」

次の日から僕がホラ吹き呼ばわりされたのは、言うまでも無い。

……たった一人だけ、僕の話を信じてくれた友人がいるけど。