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「奴との距離はどのくらいある?」
「あ、あと一、二分……いや、もうすぐ来る!」
ぐるりと辺りを見渡し、状況を確認。人気のない道だ。しかし、この後ろは住宅街。ご苦労だな、周りに気を遣って闘うのは。
「……誘導は無理か。下がる事も出来ん。ここでやるしかないな」
幸一は手袋を外し、オレをその身に召ぶ。
「魔封じの刻印……出でよ、ジン」
幸一の左眼の色が反転し、禍々しい赤黒い螺旋模様が左半身を埋めていく。
しかし、今回は随分積極的だな、幸一? オレを使うのは決まって自己防衛か、感情を乱し、自身の意図とは関係なく働いた場合だけなのにな。相手が殺人鬼ならば話は別か?
まあいい。異端種だろうが、同類の悪魔だろうが……魂を喰らえるのであれば喰わせて貰おう。
だが、こちらが臨戦態勢を整え、どこから襲われてもいいよう感覚を研ぎ澄ませていたにも関わらず……
「あれよ、幸一」
女が指摘した異質な存在は、オレ達の真っ正面から現れた……形だけを見るならば、鞄を持ち、スーツを着込み、眼鏡をかけたごく普通のサラリーマン、年齢は三十台半ばか。
まるで酔っ払いのような不規則な足取り。蛇行しつつこちらに歩み寄って来るその姿からは、とても『異質な存在』には見えない。
「……勘違いじゃないのか?」
幸一がそう言うのも無理は無い。オレもそう思う。何しろこいつからは殺気というものが感じられんのだ。視覚、聴覚、触覚……どの五感からも。