短期
短期
……なるほど、理には適っているな。
「でも、幸一って何も知らないのね? 狂信者も、到達点も知らないなんて」
呆れたような表情でこの天使はのたまうが……幸一は無表情。しかし、長年連れ添っているオレがその気持ちを代弁するならば。
洗濯も出来ず、皿洗いも出来ず、掃除も出来ず、飯も作れん輩に言われる筋合いは無い! と、こんなところか?
女は天使で世間とは無縁だし、幸一は魔術や異端種の世界なぞ知らん。まあ、無理も無いな。
ずれかけた話題を戻そうと、幸一は切り出す。
「で、それはどういう類の悪魔なんだ?」
「それなんだけど……悪魔じゃないと思う」
「なら、異端種とやらか? あるいは狂信者か?」
「……違うと思う」
「……じゃあ、なんだ?」
女は髪を掻き上げながら、釈然としない口調で説明した。
「そこなのよ……異質と言えば異質なのは間違いないわ。私が生きてきた中で、一度も知覚したことのない気配だから。とにかく薄いのよ、気配と言うか、存在感と言うか」
『祝福の地』にいる『天使』が、知覚した事の無い気配だと? 地上に疎いとはいえ……有り得るのか、そんな存在が?
「だから、気をつけて。正直、能力も見当がつかないし、得体が知れない」
だが幸一は無感動な調子で、
「会えたらの話だな、それは」
そう続けたのだが、女は、エッ、と叫んだ。足を止めた女に対し、幸一が振り返る。
「どうした?」
「……あの、今そいつに会ったら、ヤバイ?」
アハハハ、と気まずそうに笑っているが……
「……近くにいるのか?」
「って言うより、そいつをどうにかするもんだと思ってたから……ズンズンズンズン近づいてるんだけど、そいつの気配」
幸一は表情は崩さずにやや早口で告げた。