呑気
呑気
夜気が、風に乗せて冷たさを運ぶ。黒の世界が電灯の光を弱々しく見せることで、僅かな音を恐怖の対象へと変えている。
「思ってたんだけどさ、この街って、ちょっとおかしいと思うの」
そんな恐怖を紛らわそうとするのか、はたまた何かしらの意図があるのか。女は夜道を歩く中、脇でいきなり喋り始めた。
「さっきも言ったけど、この街で私が知覚した、人とは違う異質な気配は十や二十じゃきかない。『清算』で動かされていた時期に訪れた他の街には、異端種の気配なんて一つあるか無いかだったわ」
幸一は無言で先を促す。
「でも、ここではとても多く感じるのに、異常な事件は、幸一の家に泊まるようになって五日目までは無かった。幸一の話じゃ、そんな事件はほとんどないって言うのに」
それが、ここ最近は頻発している。
「それだけ気配が多く、逆に事件が少ないのなら、考えられるのは一つ。異端種は、自分達のテリトリーを作っているのよ。なら、こんな、自分達の存在を公にしてしまうようなことはしないはず。もしばれたら、狂信者が黙っていないでしょうし」
「キョウシンシャ?」
異端種や悪魔を根絶しようとする、魔術師連中だ。
……他の機関の魔術師も厄介と言えば厄介だが、こちらはまだ利口な奴がいる。場合によっては、取引が可能。
しかし、教会の狂信者は違う。オレ達の絶対根絶が大前提。人質がいようと、その人質を見殺しにし、攻撃を仕掛けるような連中だ。悪魔のオレが言うのもなんだが、ああいうのを人でなしというのだろう。
「だから、この事件を起こしているのは、異端種ではないと私は思うの。それで、異端種とは違う、貴方に巣食っている悪魔のような他の異質な気配を探ってた」