デルイ
デルイ
それにしても呑気なことだ。知り合いが失踪したのだろう?
オレが囁いたことで、幸一の箸の動きが止まる。女は美味い美味いと呑気に喰い続けている。
幸一の沈黙が何を言いたいのか、オレはわかっている。こいつは、こう言いたいのだ。
この一連の事件は、貴様の同類の手によるものか? と。
それに対するオレの回答はこうだな。
バカを言うな、そんなことがどうしてわかる? 人間か悪魔の仕業かなどわかる訳無い、現場を見てもいないのに。
「……喰ったら、寝てろ。俺は散歩してくる」
こいつが知り合いを探しに夜の街に繰り出すのは、知人が失踪してから今日で一週間になる。何もしていなかった訳では無い。もっとも、見付かっていないということは、何もしていないのとほぼ同義だがな……ククク。
まあ、あの娘を見つける他に、この犯人を捕らえようと幸一はしているようだが……さてうまくいくかな?
「あ、なら私も一緒に行くわよ」
野菜炒めを咀嚼すると、女は椅子から立ち上がった。
「今日はなんか、風がざわついているし」
「……なにか、不穏な気配でも感じるのか?」
これには、女はオレにも幸一にも理解できないことをさらりと述べた。
「不穏というか、異質な気配だったらしょっちゅう知覚しているわよ?」
「それは、悪魔という意味でか? ……数にしてどのくらいだ?」
「悪魔じゃなくて、異端種だけど……数としては、十や二十じゃきかないわ」
何故それを早く言わなかった、と言いかけた幸一を遮ったのは、腕を組んで首を傾げる、女の不可思議な台詞だった。
「でも、今日は……そう、なんて言えばいいのかな? 強いて言うなら、とっても薄い気配があるのよね。なんだろ、これ?」