デルウィスパ1
デルウィスパ1
「俺には、誰かと喜びや悲しみをわかち合う資格などないからだ」
ジュウジュウ、目玉焼きだけが音をたてる。
「分かち合うのに、資格なんているの?」
「ああ」
「辛くても?」
「ああ」
「苦しくても?」
「ああ」
理解できない、という顔つきで女は問う。
「どうして?」
コンロを切り、換気扇を切る。途端に台所は静かになった。
「俺は、人を殺め過ぎた」
眉一つ動かさず、目玉焼きを皿に載せる。
「許されることではない、絶対に」
沈黙が部屋に満ちる。だがそれを破るように女は笑顔で幸一の背を叩き始めた。
「じゃあ、私が一方的に幸一と喜んだり、悲しんだりするのは? それなら私が私のためにしているんだから、別にいいでしょ?」
なんとも自分勝手な意見だな。
……しかし、これに幸一は唇の端を、ほんの少しだけだが……苦笑気味につりあげた。