ショウタイム

デル2

デル2

「色々買っちゃった、ありがと」

「……ああ」

 あの後、店員は色々な服を選んでいたようだ。元々素材はいいのだ、男物の服を着ていても通行人が振り向くくらいに。何を着ても似合う……いや、この女の破滅的な美的感覚は例外中の例外だが。

「でも、幸一は何も買わなくていいの?」

「ああ」

「……でも、昨日も同じ様な服、着てなかった?」

 首を傾げる女の疑問はもっともだ。幸一が今着ている服は黒を基調とした服だ。昨日も、黒を基調とした服。細かい所は違うのだが……まだ女には服の些細な違いはわかるまい。

「ああ」

「どうしてそんな真っ黒な服を着ているの?」

 その表情は、まるで鉱物のように動かない。しかし、注意深く見ていたなら、その変化に気付いたかもしれない。

「人は、知り合いが死んだ時、喪服というものを着る」

「モフク?」

「こういう、黒い色合いの服だ」

 幸一は楽しまない。娯楽には接さない。テレビで見るのはニュースだけ。

 幸一には趣味が無い。父親の遺品のCDですら、聞いたことは一度も無い。

 幸一は夢を持たない。オレという、迫り来る死の影と戦うのがあいつの宿命。

幸一は、何があっても笑わない。己が笑うことが、罪だと知っているから。

 命を奪いし者達は、何をしても還ってこない。様々な制約ですらも、幸一は己を罰することに満足できない。

 常に、罪の意識がつきまとっている。

己の死を渇望している。

「じゃあ、私はモフクを着ることはないわね」

 何故、と問いかけようとした幸一を遮ったのは、女の満面の笑み。

「あんなに強い幸一が死ぬなんて考えられないもの。周りの人も幸一が守れば死ぬなんてないだろうし」