ショウタイム

ビパー

ビパー

が、その下はどうだ? ジーンズの短パンを履き、その下には黒のストッキングだ。これでは冬に備えているのか、夏に備えているのかさっぱりわからん。

長い沈黙を破って、幸一は口を開いた。

「アスト」

「なーに?」

「……季節、というものをお前は考えているか?」

「キセツ?」

 そのアクセントを聞いた瞬間、幸一は溜息をつき、試着室のカーテンをゆっくり、ゆっくりと閉めた。

「ちょ、ちょっと! 何する」

「他のに着替えろ」

 告げると……女はブツブツ文句を言いつつも着替えを始めたらしい。布の擦れる音が聞こえてくる。

そして、しばらくすると……フフ、と不気味な笑い声が聞こえてきた。

「……今度のは驚くわよ」

 もう充分驚いている。今更何に驚けと言うのか、この女は。

「ジャァァアン!」

 ……店員は、絶句。

……オレは、凍りついた。

……幸一は、瞼を、一度、強く閉じた。眼の前の光景があまりにも想定外の物だったため、自分の眼が信じられなかったのだろう。

 眼を開く。

……頭には真っ黒なシルクハットが乗っていて、上着は西部劇のガンマンが着るような皮ジャン、下はヒラヒラのフリルがついたスカート。しかもサングラスが怪しさに拍車をかけ……ベルトを両手に持って鞭のように構えているのはすでに破滅的だ。

 幸一はカーテンを閉じる。前とは違い、パンドラの箱を閉じるような迅速さで。

「ちょ、ちょっと! 幸一!」

 試着室でキーキー叫ぶ馬鹿天使を無視し、幸一は店員に向き直る。

「……すまんが、あいつに、似合いそうな服を、三つ四つ、適当に、見繕って、くれないか?」

「……かしこまりました」

 ゆっくり、ゆっくり自らを落ち着かせるように喋る幸一に、店員は心底気の毒そうな引きつった笑みを浮かべた。